2018/02/16

「理念」や「ビジョン」ってそんなに大事なの?

 

この記事を書いている人 - WRITER -
口腔外科医(歯科医師)。医学博士。 全米No.1のガンセンター、MDアンダーソンガンセンターでゲノム研究に挑戦しています(Python, R, バイオインフォマティクス、機械学習)。「口」と体を健康に保つ方法を体系化、情報を発信中。
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先日、あるグループに誘われました。

数名で集まって、お茶をしながら、自由に語り合おう、という趣旨のグループです。
そのグループに誘われたメンバーのうちの一人(自分は知らない方)が、そのグループを立ち上げた方に、矢継ぎ早に質問をあびせていてビックリしました。

 

「理念は何ですか?」「実現したいことはなんですか?」「実現したい世界はどんな世界?」「そして、世界にはどんな人たちがいる?」

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私はすごく違和感がありました。

その方の指摘は、至極まっとうであるはずなのに、なぜか心がザワザワしました。

なんだろう!?この違和感……、と思い、自分の心のザワザワを整理してみました。

先日、あるグループに誘われました。
そのグループを立ち上げた方に、「理念は何ですか?」と質問する方がいて、私はすごく違和感がありました。

お茶をしながら自由に語り合う、という気楽なグループに、むしろ本当に「理念」って必要なの、と考えているうちに、そもそも「理念」って何だろう、と思ったので、辞典を引いてみました。

 

“りねん【理念】[名]物事がどうあるべきかについての根本的な考え方。「憲法の―に基づく政治」”

参考:明鏡国語辞典 第二版 北原保雄[編](P1825)

つまり、「理念」とは「物事がどう在るのが望ましいかについての一番大切な考え方」です。

確かに、政治家や組織のリーダーが人をひきつけるためには、魅力ある「理念」が必要でしょう。
魅力ある「理念」があれば、リーダーは数多くの人の支持をえられますし、企業のような組織体であれば、従業員をひきつけたり、望ましいマーケットにアプローチすることができるからです。

でも、本当の「理念」って、きっと数多くの人生にあまり関係がなくて、そんなにメリットがないのではないか、と私は思っています。

だって、「物事がどう在るのが望ましいかについての一番大切な考え方」は一人ひとり違うはずだからです。
そう考えれば、数多くの人の「利益」を中心に考えられた「理念」は「物事がどう在るのが望ましいかについての一番大切な考え方」とは少しずつズレてしまうような気がします。

数多くの人の「利益」がベースにあれば、数多くの人の「利益」を調整するための「理念」がつくられてしまうからです。

「あなたの理念は何ですか?」「なにを実現したいの?」という「理念」や「ビジョン」を問う方のベースにあるのは、「物事がどう在るのが望ましいかについての一番大切な考え方」の有無ではなく、自分にとってメリットがあるかないか、ではないでしょうか。

語弊があるかもしれませんが、私はそれを否定したいわけではありません。
むしろ、社会には数多くの方のメリットを中心に考えられた「理念」や「ビジョン」が必要だと思っています。

でも、先に数多くの人のメリットがあって、そこに向かう「理念」や「ビジョン」を構築するのは少し違うのではないでしょうか。
心のザワザワを整理してみましたが、これが冒頭で私が感じた違和感でした。

「無」にこそ物事の本質がある、と説く「老子」の第一文に<道の道とすべきは、常の道に非ず。名の名とすべきは常の名に非ず。……>があります。

<これが道ですと示せるような道は、恒常の道ではなく。これが名ですと示せるような名は、恒常の名ではない……>

参考:老子 (岩波文庫)(P11-12)2008

私の解釈は、「これが物事を行うべき正しい方法ですよ、と表現された方法は、原理原則にかなった方法ではなく、代表取締役、○○の専門家、○○代表などの役職や分野を限定された人は、そこに固定されて成長が限定された人である。……」です。

例えば、私は口腔外科医(歯科医師)ですが、自分の専門分野を限定しているので、専門分野以外の数多くの分野に挑戦・チャレンジするチャンスを逃しているかもしれないということです。機会損失には自分自身で気づくことができませんものね。

同じようにこれが「理念」です、と先に表現してしまうと、そこに「物事がどう在るのが望ましいかについての一番大切な考え方」が限定され、こうするのが至極まっとうという数多くの人のメリット、常識、空気に縛られてしまうこともあるのではないでしょうか。

先日、立ち上げられたグループで、数多くの人のメリットを中心に考えられた「理念」や「ビジョン」を構築することは、むしろ、立ち上げたばかりのグループの可能性を限定してしまうのではないか、と感じたからこそ、心がザワザワしたのでした。

まだ表現されていない「物事がどう在るのが望ましいかについての一番大切な考え方」があるような気がします。
遠くではない身近な物事にこそ、私たちが向き合わなければならない数多くの問題があるからです。

かく言う私は<健「口」長生きの専門家>と自分を限定していますし、「病気で後悔しない世界」を目指していていましたぁぁぁ!!

 

 

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口腔外科医(歯科医師)。医学博士。 全米No.1のガンセンター、MDアンダーソンガンセンターでゲノム研究に挑戦しています(Python, R, バイオインフォマティクス、機械学習)。「口」と体を健康に保つ方法を体系化、情報を発信中。
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