2018/02/16

食欲を鎮める画期的な方法

 

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口腔外科医(歯科医師)。医学博士。 全米No.1のガンセンター、MDアンダーソンガンセンターでゲノム研究に挑戦しています(Python, R, バイオインフォマティクス、機械学習)。「口」と体を健康に保つ方法を体系化、情報を発信中。
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「どうしても食べたくなってしまう」
「我慢できずに食べ過ぎてしまう」
という方にお勧めしたい本を見つけました。

 

本書の方法は、はやりのダイエット法とは、コンセプトが大きく異なっています。
さまざまな食事制限が流行っています。短期的にみると、どれも素晴らしい効果を上げているようです。体重が減少したり体脂肪が減少したり、それに伴って血圧や体調が改善したというお話しもよく聞きます。

 

しかし、長期的にみるとどうなのでしょうか。栄養の偏りや不足、継続や反動などの問題が出てくるのではないでしょうか。精神的に追い詰められる方もいるようです。

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本書の方法はシンプルです

「自分の舌先で感じている味覚に集中すること。そして、胃で感じている温度と重みをしっかり受け取ること。食欲鎮静できるかどうかは、この2点にかかっています。
① まずは舌先に食べ物をあててじっくりと味わい、→
② 次に胃で温度と重さを感じる (P66-67)」

本書の方法は、最も鋭敏な感覚器の一つである舌を使い、食欲を鎮める方法です。

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私が目次を読んだ時に一番気になったのは、“よく噛む”が否定されていたことでした。
歯科医師として、日ごろからよく噛むようにすすめているからです。

よく噛むことは、食べ物を細かくして消化を助けるだけでなく、だ液をたくさん出します。
だ液は、消化や飲み込みを助けます。抗菌作用や口の中をきれいにする作用があります。

〝よく噛む”を否定するなんて、と思いながら読みました。
しかし、読み進めていったところ、本書のメソッドに納得してしまいました。確かに、噛む運動(そしゃく運動)は筋肉と神経が複雑に関連していて、よく噛もうと上下の歯を合わせようと意識すればするほど難しくなってしまうかもしれません。

 

「よく噛むためには、噛むことを意識してはいけません。噛むという行為は、意識を向ければ向けるほど難しいようにできているのです。
(中略)本当に味わおうと思ったら、よく噛もうと意識するのではなく、まずは舌先に食べ物を当てることです。(P54)』

 

私たちの舌は、噛んでいるとき、無意識に食べ物をのせながら、ねじれています。舌は、大きな食べものを歯の上に運んだり、反対側に運んだりしてリズミカルに動いています。舌は、頬の粘膜と一緒になって食べ物を支え、上下の歯は食べ物をつぶしています。

 

舌先を食べ物に当てるという本書の方法は、舌と頬の粘膜で食べ物を支えるという噛む運動を助けます。

舌は、噛んだり飲み込んだり運動を助けるという運動器であると同時に感覚器でもあります。味を感知し、食べ物が栄養であるか毒であるかを見分けたりしています。そのため本書の方法は、結果的に“よく噛む”だけでなく“あじわう”こともできるようになるでしょう。

 

著者は、自分の状態を客観的に細かく把握しており、自分を客観視されています。自分の力でここまで辿りつかれたという事実に私は驚きました。
なぜならば、300年以上前の健康本、「養生訓」の一節が思い出されたからです。

 

「『養生の道』を常にわきまえて、欲を抑えながら楽しむとよい。楽しむ気持ちを忘れないことが養生の本意である。(P87)」

「飲食しない日のない人生はない。だから、常に心に誓って『欲』を抑えないと、つい限度を越してしまい、病気になる。『禍は口より出て、病は口より入る』と昔の人はいった。口への飲食の出し入れには、日頃から注意を払う必要がある。(P109)」

参考:養生訓 (いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ)貝原益軒(著)、城島明彦(訳) 致知出版社 

 

東洋思想において、欲は、勝手気ままに耳・目・口・体がむさぼることです。もともと食欲というのは、大脳辺縁系で生じ、前頭前野で食事が可能かどうか判断しています。我慢するのではなく、欲を鎮めながら楽しむ本書の方法は、東洋思想に通ずるものがあります。

 

食べ物を制限して、食欲を抑え込むのではなく、食べ方の意識を変えることで心を満たす。
本書のメソッドは、簡単に実践できますし、結果的に“あじわう”や“よく噛む”ということにつながります。

 

よく噛みましょう、と言いながら私自身がよく噛めていないことに本書を読んで気づきました。
また、今までおいしいおいしいと食べていたものをきちんと味わっていなかったのかもしれない、とさえ思いました。

 

“食べる”を極限まで突き詰めた著者の方法をぜひ読んでみてください。
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ためになった箇所を一部、抜粋しご紹介します。

P47
「情動や欲望とは、自分の中に客観視が欠如することで生まれるものです。私たちは、その情動や欲望に振り回されて行動に及びますが、どんな感情も欲望も、客観視の視点を自分の中に育むことで鎮めることができます。
この視点を手っ取り早くつくり出すには、感覚器官一点に集中するのが一番。瞑想では主に呼吸に集中することで、食事では味覚に集中することでこれを可能にします。」

P86-87
「 私は、食事瞑想の目指すべきゴールは『食べる前を制覇すること』だと考えています。なぜなら、食べる前とは一番食欲に支配されている状態であり、『食べたい』という衝動が強くなっているからです。」

P136
「あなたに、もし思いもよらないストレスがかかったら、あなたの食欲は必ず影響を受けます。呼吸と一緒です。怒りで鼻息が荒くなるように、緊張で呼吸が止まるように、あなたの精神状態で食欲は波を打つのです。
食欲・睡眠欲・性欲は人間の三大欲求であり、人のストレスを代謝させてくれる働きを持ちます。いわゆるストレスのはけ口ですね。」

 

◆目次◆

はじめに
第1章 やせてもやせても、やせられないのはどうして
第2章 「本当の味わい方」を知る
第3章 味わい方を変えて「やせ思考・体質」になる
第4章 心が整う食事瞑想
第5章 一生太らないためのダイエット黄金メソッド
おわりに

 

参考:

 

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

 

 

さいごまで読んでくださり、ありがとうございます!

ぜひチェックしてみてください。

 

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