2018/03/20

エプーリスという歯茎の腫瘍を治療していません。原因は?手術で切除すべきですか?

 

この記事を書いている人 - WRITER -
口腔外科医(歯科医師)。医学博士。北海道大学卒業後、 日本一短命の青森県に戻り、地域医療に従事。バルセロナ、メルボルン、香港など国内外の学会で研究成果を発表。「口」と体を健康に保つ方法を体系化、情報を発信している。趣味は読書(Amazon「ベスト100レビュアー」)とハンドボール。
詳しいプロフィールはこちら

 

先日、ある女性からこんな相談がありました(質問内容をアレンジしています)。

右の下の歯茎にやわかいかたまりがあります。

 

歯科医院にいったところ、「エプーリス」と言われました。

様子をみてもいいし、治療をする場合は、大きな病院で手術を受けたほうがいいそうです。

 

だんだんと大きくなっているので、がんじゃないか不安です。

このまま様子をみてもいいですか?それとも手術したほうがいいですか?(20代 女性)

 

 

様子をみましょう、と先生に言われてもよくならなければ、不安になりますよね。

仕事で大きな病院に受診するのも簡単ではないですよね……。

スポンサーリンク

 

今回の記事は、歯肉のもり上がりが癌ではないか、と不安に思っている方のために書きました。

 

まず、お話ししておきたいことがあります。

 

「エプーリス」は、歯茎(歯肉)の腫瘍(しゅよう)ではありません

 

「エプーリス」は、歯茎が刺激や炎症(えんしょう)でもり上がったものなんです。

(許可を得て掲載:転載不可)

 

「エプーリス」と腫瘍(しゅよう)の違いについて、簡単にお話していきましょう。

原因と治療のメリットデメリットについてもお話しますね。

 

「エプーリス」とは何か?

「エプーリス」は、歯茎(歯肉)の腫瘍(しゅよう)ではありません!

刺激や炎症(えんしょう)によって歯茎(歯肉)が反応してもり上がったものなんです。

 

私たちだって、何かの刺激に対して行動しますよね。

例えば、ビーチでは日差しを避けるためにパラソルをさしますし、サングラスをつけますよね。。

体も同じです。

何らかの刺激に対して、歯茎(歯肉)が反応してもり上がったものが「エプーリス」と呼ばれます。

 

「エプーリス」は、口の中のできものの中で数が多く、口の中のできもののだいたい半分ぐらいです。

20~30代ごろにできやすいです。

 

では、「エプーリス」と腫瘍(しゅよう)の違いはなんでしょうか?

 

 

「エプーリス」と腫瘍(しゅよう)の違い

腫瘍(しゅよう)は、細胞(さいぼう)が異常に増えてかたまりになったものです。

わたしたちの細胞(さいぼう)は、常に周りとの連携をとっていて、数や形が制御されています。

 

腫瘍(しゅよう)は、周りとの連携を無視して、細胞が異常に増えていくものです。

腫瘍と聞いてびっくりされた方もいらっしゃると思いますが、腫瘍イコールがんではありませんよ。

腫瘍≠がん

腫瘍は、良性と悪性の大きく2つにわかれます。

良性腫瘍は、秩序をある程度保ちながら、できた場所で大きくなっていきます。

悪性腫瘍は、細胞が自分から無秩序に増え、ほかの組織に侵入したり散らばったりして広がる病気で、がんともいいます。

悪性腫瘍は、細胞自ら死ぬことがなくなり、体を守るはずの免疫(めんえき)をのがれ、炎症(えんしょう)でパワーアップし、栄養の血管をよびこむこともできます。

 

一方、「エプーリス」は、刺激や炎症(えんしょう)によって歯茎(歯肉)が反応してもり上がったものの呼び名です。

 

専門的には下記になります(専門用語が使われているので、難しく感じる方は読み飛ばして大丈夫ですよ)。

エプーリスepulisはギリシア語のepi(上)とoulon(歯肉)の合成語で,歯肉に生じた良性の限局性腫瘤の総称で、臨床診断名として用いられてきた.

現在では,エプーリスは真性の腫瘍ではなく,歯肉に発生した炎症性あるいは局所刺激による反応性増殖物に対して用いられる用語である(口腔外科学第3版 (P249)白砂兼光・古郷幹彦編著 医歯薬出版)。

 

「エプーリス」と腫瘍(しゅよう)は細胞レベルでみるとぜんぜん違うものでしたね。

 

「エプーリス」の原因と3タイプ

「エプーリス」の原因は大きく3つにわけられます。

炎症によるもの

腫瘍に似ているもの

特殊なもの

一緒に詳しくみていきましょう!

 

炎症によるもの

炎症(えんしょう)によって、体が反応して、歯茎(歯肉)がもりあがったものです。

「エプーリス」の中でも一番多くみられ、代表的なものに「肉芽種性(にくげしゅせい)エプーリス」があります。

腫瘍に似ているもの

まれですが、腫瘍に似て細胞が異常に増えるものもあります。

代表的なものが「巨細胞性(きょさいぼうせい)エプーリス」です。

欧米では比較的多いのですが、日本ではまれです。

特殊なもの

入れ歯の刺激によるもの、妊婦さんがなるもの、生まれたときにはできているものがあります。

妊娠したときにできるものは、「妊娠性エプーリス」と呼ばれ、出産後に小さくなることがあるので、様子をみます。

 

このように「エプーリス」は、細胞レベルで大きく3タイプに分かれます。

次に「エプーリス」の治療のメリットデメリットをみていきましょう!

 

「エプーリス」治療のメリットデメリット

治療の一番のメリットは、顕微鏡の検査できちんとした診断がつけることができることですね。

 

手術を受けるデメリットは、お金がかかるということですね。

切除すれば、「エプーリス」がなくなりますが、まれに再発することがあります。

「エプーリス」は、歯の根や骨の膜からできているからです。

上の歯茎(歯肉)の部分だけとっても、また出てくることがあるのです。

以前は、関連した歯を抜いていましたが、今は歯を抜くことはほとんどないですよ。

様子をみるメリットは、手術を受けなくてもいい、ということです。

ただし、手術を受けないと「エプーリス」はなくなりません。

化膿止め(抗菌薬)ではよくならないんですね。

 

先ほどお話しした3タイプのうち、3つ目の特殊なものであれば、ひとまず様子をみてもいいでしょう。

入れ歯の刺激によるもの、妊婦さんがなるもの、生まれたときにはできる「エプーリス」です。

 

様子をみるデメリットは、細胞レベルでのきちんとした診断がつかない、ということです。

(許可を得て掲載:転載不可)

それの何がデメリットなのかというと、非常にまれですが、歯茎(歯肉)に癌ができることもあるからです。

歯茎(歯肉)の癌は、「エプーリス」と見分けがつきにくいことがあります。

 

いったいどんな症状のときに注意したらいいのでしょう。

 

ご注意。歯茎にも癌ができる

歯茎(歯肉)にも癌ができることがあります。

以下の症状がある場合は、すぐに受診しましょう。

表面に赤と白の斑点がある

触ると痛い

触ると血が出る

できものの周りが硬い

 

非常にまれですが、歯茎(歯肉)には、癌ができることもあります。

きちんとした診断をつけるためには、顕微鏡の検査が必要ですね。

 

では、いよいよ「エプーリス」の手術と治療の料金についてお話しましょう!

 

「エプーリス」手術と金額

1日目(初診日)の流れと料金

2日目(手術日)の流れと料金

3・4日目(経過観察日)の流れと料金

 

1日目(初診日)の流れと料金

総合病院や大学病院に初めて受診する日(初診日/しょしん)です。

 

あなたから、これまでの話を聞たり、触ったり大きさを測ったり、口の中の写真を撮ったり、レントゲン写真をとったりします。

レントゲン写真では、異常な骨の吸収がないか確認します。

歯茎(歯肉)のがんは顎の骨を吸収するからです。

 

お互いの都合のつく日に、手術の予約をとります。

 

料金(保険料3割負担の方の場合)

  • 初診料 1000円程度
  • レントゲン代 1500~5000円程度(歯科用のCT検査が3500円程度かかります)

 

2日目(手術日)の流れと料金

手術の日です。

ご飯をしっかり食べてリラックスしてのぞみましょう。

 

全身麻酔(ぜんしんますい)ではなく、外来で局所麻酔(きょくしょますい)の手術です。

まず麻酔の注射をして、「エプーリス」の部分をメスで切ります。

「エプーリス」は、歯の根や骨の膜からできるので、できるかぎり膜まで含めて切除(せつじょ)します。

切除した「エプーリス」は顕微鏡の検査(病理学的組織検査/びょうりそしきがくてきけんさ)に出します。

 

料金(保険料3割負担の方の場合)

  •  再診料200円程度
  •  エプーリスの手術代(歯肉腫切除術) 2000円程度
  •  病理組織診断 3000円程度
  •  処方代200円程度+薬代

 

3・4日目(経過観察日)の流れと料金

傷口の状態を確認し、顕微鏡の検査の結果を聞きます。

 

料金(保険料3割負担の方の場合)

  •  再診料 200円程度

 

まとめ

「エプーリス」は、歯茎(歯肉)の腫瘍(しゅよう)ではなく、歯茎が刺激や炎症(えんしょう)でもり上がったものでしたね。

治療のメリットは、「エプーリス」がなくなること、顕微鏡の検査できちんとした診断がつけることができること。

(許可を得て掲載:転載不可)

 

「エプーリス」は、再発することがあります。

「エプーリス」は、歯の根や骨の表面についている膜である歯根膜(しこんまく)や骨膜(こつまく)からできるからです。

 

今回の記事は、歯肉のもり上がりが癌ではないか、と不安に思っている方のために書きました。

悩んでいる方のご参考になれば嬉しいです!

 

非常にまれですが、歯茎(歯肉)には、癌ができることもあります。

きちんとした診断をつけるためには、顕微鏡の検査が必要です。

少しでもおかしいな、と感じたら、まずはお近くの歯科医院で相談してみてくださいね。

 

 

この記事を書いている人 - WRITER -
口腔外科医(歯科医師)。医学博士。北海道大学卒業後、 日本一短命の青森県に戻り、地域医療に従事。バルセロナ、メルボルン、香港など国内外の学会で研究成果を発表。「口」と体を健康に保つ方法を体系化、情報を発信している。趣味は読書(Amazon「ベスト100レビュアー」)とハンドボール。
詳しいプロフィールはこちら
 

Copyright© KEN's blog , 2018 All Rights Reserved.