2018/02/16

顎が痛くて口を大きく開けることができません【顎関節症の原因と治療】

 

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口腔外科医(歯科医師)。医学博士。北海道大学卒業後、 日本一短命の青森県に戻り、地域医療に従事。バルセロナ、メルボルン、香港など国内外の学会で研究成果を発表。「口」と体を健康に保つ方法を体系化、情報を発信している。趣味は読書(Amazon「ベスト100レビュアー」)とハンドボール。
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口を開けたときに指3本が縦に入りますか。
それとも2本しか入りませんか。

 

指2本が限界で、口を大きく開けることができない、という方がいます。

口を大きく開けようとすると、耳の前のところ(顎関節部)が痛くなり、食べものを噛むときにも痛みます。

病院には行こうと思っても、学校や仕事が忙しくてなかなか受診できない方が多いようですね。

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そんな方のために今回は、「顎関節症(がくかんせつしょう)」の原因と治療、応急処置についてお話しします。

1)「顎関節症」とはどんな病気か
2)「顎関節症」の原因は1つじゃない
3)「顎関節症」の治療は保存的
4)「顎関節症」の応急処置には気をつけて
5)まとめ

 

1)「顎関節症」とはどんな病気か

びっくりされるかもしれませんが、「顎関節症(がくかんせつしょう)」は、一つの病気ではありません。

顎の関節と下顎(かがく)を動かす咀嚼筋(そしゃくきん)の障害です。

 

そのため、「顎関節症」を英語に直すと、最も頻繁にみられる顎関節・咀嚼筋の障害/most common temporomandibular disorderとなります(*1)。

 

でも、顎の関節や咀嚼筋(そしゃくきん)に病気や障害があるからといって、「顎関節症(がくかんせつしょう)」とはかぎりません。

 

例えば、黙っていてもズキンズキンとした痛みが続くなら、体の防御反応である炎症反が起こっている可能性がありますし、段々と盛り上がってきているなら、腫瘍の可能性もゼロではありません。

 

注意したいのは、顎の関節に症状が出る全身の病気です。

「関節リウマチ」や「シェ―グレン症候群」などの病気でも顎関節に症状が出ることがあります。

非常にまれですが、発熱、疲労感、目や口の渇き、朝起きたときの手のこわばりなどがあると、「関節リウマチ」や「シェ―グレン症候群」のこともあります(*2、3)。

 

2)「顎関節症」の原因は1つじゃない

先ほど説明したとおり、「顎関節症(がくかんせつしょう)」は、一つの病気ではありません。

詳しい内容はさすがに専門的なので今回はとばします。
「顎関節症」には5つのタイプがありますが、原因も一つではなく、複数の要因があります(*4)。

〔どうしても気になる方のために書いておきます。顎関節症の5つのタイプは、咀嚼筋痛障害、顎関節痛障害、復位性関節円板転位、非復位性関節円板転位、変形性顎関節症です(*1)。〕

例えば、食べものを片側で噛む癖(偏咀嚼/へんそしゃく)や食いしばる癖がもっている方がいます。

 

顎の関節や咀嚼筋(そしゃくきん)に負担をかける癖がないかチェックしましょう。

 

ちなみに、口を開けたときに耳の前が痛ければ、顎関節に症状があります。

両手を耳の少し前に置いて、口を開けたり閉めたりすると、顎関節が動いているのが分かります。

 

頭の横のところ(側頭部/そくとうぶ)や耳の下のところ(咬筋部/こうきんぶ)に手を置いてみてください。

噛みしめたときに盛り上がるのが咀嚼筋(そしゃくきん)です。

 

多くの場合、自分の癖には気づいていません。

例えば、ほおづえやうつ伏せ寝の癖などは、顎関節に負担がかかる癖です。

 

他にも、上下の歯をくっつける癖、歯列接触癖(TCH)があります。

上下の歯は少し(2~5mm程度)離れていることが基本の状態です。

 

それが食いしばっていたり、常にくっついていたりすると、口を閉じる筋肉(咬筋)や顎関節に負担がかかってしまいます。

 

「顎関節症」の要因は、一人ひとり違います。

だからこそ、顎の関節や咀嚼筋(そしゃくきん)に負担をかける癖がないかチェックしてみてくださいね。

知らずしらずのうちにそういった癖があると、一旦、症状が落ち着いてもまだぶり返してしまうかもしれないからです。

 

3)「顎関節症」の治療は保存的

まず、1週間安静にして様子をみましょう。

顎関節や咀嚼筋(そしゃくきん)を休めることが大事です。

1週間はやわらかいものを食べて、なるべく両側で噛むようにしましょう。

片側だけだと、一方の顎関節に負担がかかってしまうからです。

 

次に、大きな口を開けるのは避けましょう。

とくにあくびには注意して、顎に手をそえるようにしてください。

部活やクラブ活動などのスポーツや楽器の演奏は無理のない範囲でやりましょう。

 

そして、食事、勉強、仕事などの姿勢もチェックしてみてください。

猫背になっていると、何らかの負担がかかっているかもしれません。

*姿勢(頭位)と下顎の位置は関連しています。しかし、「顎関節症」の要因になっているかどうかはまだ明らかになってはいません。

 

「顎関節症」は、約7割の人はほうっておいても1年後には症状がよくなります(*5)。

 

 

 

そのため、すぐにかみ合わせを治療する必要はありません。

 

また、どうしても症状が良くならなければ、顎関節に注射をしたり、手術もありますが、適応は限られているようです。

 

4)「顎関節症」の応急処置には気をつけて

どうしても痛みが強くてご飯を食べられない、という方は痛み止めが必要です。

私は、症状や状態にあわせてロキソプロフェンナトリウム、セレコキシブ、アセトアミノフェンなどの痛み止めを処方しています。

 

忙しくて病院に受診できない場合、「ロキソニンS」が薬局でも購入できますが、薬剤師の先生に注意事項をよく聞き、用法用量をきちんと守ってくださいね。

 

注意して欲しいのが、薬をまん然と飲み続けること。

確かに、痛み止め(NSAIDs:Nonsteroidal anti-inflammatory drugs )は、痛みをコントロールできます。

しかし、胃腸が弱い人が使うと、胃が痛くなることがあります(胃炎や胃潰瘍)。
むくんだり、血圧が高くなったりする副作用が出ることもあるので、自己判断で飲みつづけるのは危険です。

 

5)まとめ

「顎関節症」の要因は、一人ひとり違います。

毎日の小さな行動の積み重ねが「顎関節症(がくかんせつしょう)」を引き起こします。

だからこそ、症状がなかったとしても顎の関節や咀嚼筋(そしゃくきん)に負担をかける癖がないかをチェックしてみてくださいね。

「顎関節症」と似た病気もあるので、1週間様子をみて、症状がよくならなければ、かかりつけの歯科医院に相談しましょう。

 

参考文献:

*1 矢谷 博文: 新たに改訂された日本顎関節学会による顎関節症の病態分類(2013 年)と診断基準, 日顎誌 27: 76-86, 2015.

*2「ACR/EULAR新分類基準の検証結果について」日本リウマチ学会

*3 「シェーグレン症候群(指定難病53)」難病情報センター

*4 「口腔外科相談室」口腔外科学会

*5杉崎正志,‎ 木野孔司, 和気 裕之  「新顎関節症はこわくない」 砂書房

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

 

 

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口腔外科医(歯科医師)。医学博士。北海道大学卒業後、 日本一短命の青森県に戻り、地域医療に従事。バルセロナ、メルボルン、香港など国内外の学会で研究成果を発表。「口」と体を健康に保つ方法を体系化、情報を発信している。趣味は読書(Amazon「ベスト100レビュアー」)とハンドボール。
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