歯周病(歯槽膿漏)はキスでうつるのですか?
先日、「歯槽膿漏はキスでうつるのですか?」と相談を受けました(ご本人から許可をいただきました)。
よくよくお話をきくと、お友達に告白されたそうです。
ところが、告白してきた男友達にはひどい口臭があり、相談者はキスをされるのが苦痛ということです。
歯槽膿漏がありそうで、付き合おうかどうか悩んでいるとのことでした(40代 女性)。
う~ん、確かに!
誰だって歯周病(歯槽膿漏)をうつされたくないですよね。
ではどうすればいいのでしょうか。
早速、お話ししていきましょう。
このページの目次
歯周病(歯槽膿漏)はキスでうつるのか?
歯周病菌がキスで感染するのかどうかを確かめた論文を私が調べた範囲ではみつけることができませんでした。
でも、そんなに簡単に歯周病菌は感染できない、と私は思っています。
ちょっと「たんぽぽの綿毛」をイメージしてみてください。
フワフワと飛んで違う場所に落ちたとしても「たんぽぽの綿毛」にとって適した環境でなければ、定着することはできませんよね。
歯周病菌も同じです。
もともと「口」の中は500種類をこえる菌が住んでいます。
もともといる住んでいる菌を押しのけて、他人の菌が定着することはけして簡単ではありません。
歯周病菌にとって適した環境でなければ、定着することはできない、ということです。
歯周病菌にとって適した環境とは
歯周病菌にとって適した環境とはどんな環境でしょうか。
いろいろな環境が考えられますが、プラークが歯に24時間以上こびりついている状態がその一つです。
プラークが歯に24時間以上こびりついていると、プラークが成熟していって、歯周病菌にとって適した環境になるということです。
プラーク1mg当たりには100,000,000の細菌がいます。
成熟したプラークをもつ方と濃厚なキスをすれば、歯周病菌が唾液を介して感染する可能性はゼロではなさそうですね。
だからこそ、予防することはできます。
「たんぽぽの綿毛」はきれいに舗装された道路や氷の上で芽を出すことはできませんよね。
同じように、あなたの「口」の環境を整えることで、相手の歯周病菌が感染しにくい環境になります。
そうすることで、相手の歯周病菌の感染を予防することができるでしょう。
口臭の原因の80%以上は「口」の中にある
もう一つの問題は、相手のきつい口臭ですよね。
実は、成人の約1~2割にはきつい口臭がある、という報告があります(*1)。
自分の口臭になれてしまっているので、残念なことに本人はなかなか気づけません。
真剣に相手との関係を考えているからこそ、口臭があると相手に伝えるのは、デリケートでなかなか難しい問題ですよね。
厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」によれば、口臭の原因の80%以上は「口」の中にあります(*2)。
逆に言えば、「口」の中の原因を取り除くことで、約8割の口臭は改善できる、ということです。
そうは言っても、歯科医院に行って、歯周病(歯槽膿漏)の治療をしてほしいとは言い出せないですよね。
だからこそ、相手に口臭があると一方的に伝えずに、「口」の中の原因を二人で一緒に取り除いてみてはどうでしょう。
「口」の中の原因を二人で一緒に取り除こう!
相手の自尊心を傷つけないようにするにはどうしたらいいのでしょう。
まず、以下の3つから始めてみてはいかがでしょうか。
1)「最近、歯磨きすると血が出てこない?」と聞く
2)デンタルフロスを一緒に使う
3)専門家にアドバイスをもらう
あなたの意見を相手に一方的に伝えるのではなく、二人の問題にする。
そうすることで、根本的な解決に大きく近づくことができるはずです。
1)「最近、歯磨きすると血が出てこない?」と聞く
まず、「最近、歯磨きすると血が出てこない?」と聞いてみてください。
血が出てくるとビックリして磨かなくなってしまう方がいますが、血が出るところほど丁寧に磨く必要がある、と相手にやんわり伝えましょう。
なぜならば、血が出てくるところは汚れがたまって、歯茎(歯肉)が炎症をおこしているからです。
歯ブラシの仕方はこちらで詳しく説明しています。
2)デンタルフロスを一緒に使う
次に、デンタルフロスを一緒に使ってみましょう。
なぜフロスが大事かというと、歯ブラシでは磨くことができない隙間をきれいにすることができるからです。
歯と歯の間に食べかすがつまっていることがあります。
残り物が入ったシンクの三角コーナーを放っておくと、きつい臭いしてきますよね。
歯と歯の間に食べかすがつまったままの状態は、あの放置した三角コーナーと同じです。
いくら頑張って歯磨きをしても歯ブラシだけでは汚れを取れない方もいるということです。
虫歯で歯が凹んでいたり、親知らず歯茎(歯肉)の隙間が空いていたり、歯並びがデコボコになっていたり、ほっぺが邪魔したり、歯と歯の間のきつさがあったりすると、食べかすがつまりやすくなってしまうのです。
歯ブラシで汚れを取れない方には、デンタルフロスや歯間ブラシが必要なのです。
デンタルフロス、歯間ブラシはスーパーやコンビニで買うことができますし、歯科医院でも買うことができます。
いろいろな商品を比較したわけではないので、自分に合ったものを選んでくださいね。
参考までに私はこのフロスを毎日つかっています。
バトラー デンタルフロス ウィーブタイプ 1150PJワックス 1個
3)専門家にアドバイスをもらう
そして、もし一緒に歯科医院に行けそうであれば、「友人がお勧めの歯科医院があるのだけど、クリーニングもできるみたいだし、デートの前に一緒に行ってみようよ」と伝えられるかもしれません。
口臭の原因を歯科衛生士や歯科医師から伝えてもらえば、一気に解決に近づくかもしれません。
歯磨きの回数を増やす、歯磨きに時間を長くする、うがい液をつかう、ガムをかむ、舌磨きをするなど様々な対策があります。
あなたから伝えるより、専門家から伝えてもらった方がいいかもしれませんね。
まとめ
キスの前に、相手の歯周病菌が感染しにくい「口」の環境をつくりたいですね。
口臭の原因の8割は「口」の中にあります。
逆に言えば、「口」の環境を改善できれば、8割の口臭は改善できるということ。
まず、歯磨きで血が出てくるところがないか、出てくるのであれば、その部分こそ丁寧に磨くことを教えてあげてください。次にデンタルフロスや歯間ブラシを一緒につかってみましょう。食べかすを歯磨きだけでとるができない方もいます。そして、お勧めの歯科医院を一緒に受診してみましょう。
最後になりますが、「口」はプライベートな場所、他人には見せない習慣が現れる場所です。
だからこそ、この問題を解決できるのは、本人以外あなたしかいません。
つまり、お互いにとって人生を変えるチャンスが今ここにあるということです。
相手のことをそんなに思っているあなたなら、きっと思いが伝わるはずです。
このブログを読まれたあなたのお幸せを心からお祈りしています!!
参考文献:
*1 Miyazaki H, Sakao S, Katoh Y, Takehara T. Correlation between volatile sulphur
compounds and certain oral health measurements in the general population. J
Periodontol. 1995 Aug;66(8):679-84.
*2 厚生労働省>e-ヘルスネット > > 口臭の原因・実態
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