両方の親知らずの抜歯回数について教えて!一度に抜くの?二回に分けるの?

 

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口腔外科医(歯科医師)。医学博士。北海道大学卒業後、 日本一短命の青森県に戻り、地域医療に従事。バルセロナ、メルボルン、香港など国内外の学会で研究成果を発表。「口」と体を健康に保つ方法を体系化、情報を発信している。趣味は読書(Amazon「ベスト100レビュアー」)とハンドボール。
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先日、ある女性からこんな相談を受けました(質問内容を少し変更しています)。

 

両方の親知らずを抜歯しないといけないよ、

と担当の歯科医師から言われてしまいました。

しかも、神経に近い親知らずなので大きい病院で抜かないといけないそうです。

担当の先生は大きな病院の歯科口腔外科に紹介状を書いてくれます。

なかなか歯科医院に通院できなくて困っています。

両方の親知らずは一度に抜くのでしょうか?

それとも二回に分けて抜くのでしょうか?

 

確かに、総合病院や大学病院の外来は平日しかやっていないので、大変ですよね。

親知らずを抜くために、仕事を休むのは気まずいし、子供をあずけなけられない方もいらっしゃるでしょう。

今回、ご相談いただいたのは、年に1~2回親知らず腫れる方です。

炎症が落ち着いたら、また症状が出る前に早く抜いた方がいい、と歯科医師に何度か言われたそうです。

 

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早速、「両方の親知らずの抜歯回数について教えて!一度に抜くの?二回に分けるの?」についてお話ししていきましょう!

 

 

初診時に抜歯しない3つの理由

結論から言うと、ほとんどの方が2回目に受診したときに抜歯します。

大きな病院で、初診時に親知らずを抜歯しない理由は大きく3つあります。

①診察・手術の時間を確保するため

②炎症を抗菌薬で抑えるため

③検査と手術の説明に同意を得るため

逆に言えば、診察・手術の時間を十分に確保できて、炎症症状がなくて、検査と説明の同意を得られれば当日に抜歯できます。

でも、大きな病院であれば、親知らず以外の方、例えば腫瘍や炎症の方も受診されるので、当日の抜歯が難しいことが多いですね。

まず、1つ目の「診察・手術の時間を確保するため」についてお話します。

 

診察・手術の時間を確保するため

これを話すと驚かれることもあるのですが、抜歯は手術です。

歯茎(歯肉)を切ったり、骨を削ったりして、埋まった親知らずが抜歯されます。

 

親知らずの状態は、一人ひとり違います。
それは抜歯の難易度も危険度も違うということです。

下の親知らずでは、アゴの骨の神経が近い人もいますよね。

 

手術の前の診察も大事です。

親知らずの埋まった状態だけでなく、リンパ節の腫れや口の開きと顎の関節の具合などを診察します。

 

他にも、体に影響があるかもしれないので、麻酔や歯科治療の経験があるか、食べ物や薬のアレルギーがないか、通っている病院や飲んでる薬はないか、妊娠の有無などを確認しています。

 

だからこそ、診察も手術も時間をしっかり確保したがいいですよね。

 

 

次に、2つ目の「炎症を抗菌薬で抑えるため」についてお話しましょう。

 

炎症を抗菌薬で抑えるため

まっすぐにはえていても斜めにはえていても、親知らずに歯茎(歯肉)が被っていると、細菌と戦って腫れることがあります。

腫れるだけならまだいいのですが、痛いのが一番困りますよね。

歯茎(歯肉)と親知らずの間に炎症が起きると、唾をのんだり、舌を動かすだけでも痛くなってしまう方もいます。

 

 

一番困るのは、腫れや痛みなどの炎症反応があると、麻酔が効きづらいことです。

麻酔が効かないと、親知らずの抜歯は拷問ですよね。

 

痛みや腫れがある場合は、抗菌薬や痛み止めを飲み、症状がおさまった2回目に抜歯をします。

炎症反応が落ち着き、麻酔が効いて抜歯した方がお互いにとっていいですよね。

 

 

抗菌薬を飲めば症状が落ち着くけれど、年に1~2回は腫れてしまう方も多いようです。

放置した親知らずは、バーベキューの後の完全に消えていない炭に似ています。

何かのきっかけでまた燃え上がる可能性があるということです。

 

そうですね。

一旦症状が出たら、疲れて抵抗力が落ちたときなどに炎症が起きる可能性があるのです。

 

さて、3つ目の「検査と手術の説明に同意を得るため」についてお話しますね。

 

 

検査と手術の説明に同意を得るため

先日、親知らずを抜きたい未成年の方が母親と親子で受診されました。

親知らずを抜きたい親子
えっ!!今日、抜いてくれないんですか?!
古舘健
すみません。当日に神経に近い埋まった親知らずは抜歯していないんです。
親知らずを抜きたい親子
何度も学校を休ませるわけにはいかないんですよ!!
古舘健
確かにそうですよね。学校が休みのときに予約をとることもできますよ。

今日は、まずレントゲン検査をして、神経と親知らずの位置を一緒に確認しましょう!

古舘健
レントゲン写真を見ながら、手術の方法、術後に起こること、起こりうるリスクを説明します。

親知らずの抜歯の方法と危険性について説明に同意をいただけた後に、もし診察や手術を待っている他の患者さんがいなければ抜歯できるかもしれませんよ。

 

先ほど、お話させていただいたように抜歯は手術です。

検査と手術は、説明と同意なしに行うことはできません。

 

さらに、大きな病院の歯科口腔外科は、親知らずの抜歯だけしているところではないのです。

舌や歯茎(歯肉)のがんや顎の骨折などのケガなどの顎の骨や口の中の手術をします。

例えば、転んで唇や顎がぱっくり切れたり骨が折れたりして救急で運ばれてくる方もいます。

 

冒頭でもお話させていただきましたが、大きな病院であれば、親知らず以外の症状の方も受診されるので、初診当日の抜歯が難しいことが多いです。

 

 

同じ側なら両方を一度に抜歯できる!?

親知らずを2本抜歯することになった場合、上下であれば、両方を一度に抜歯するができます。

ただし、上もしくは下が比較的まっすぐにはえている場合ですよ。

 

例えば、上下左右4本の親知らずがある方の場合です。

右の上下の親知らずで1回、左の上下の親知らずで1回の抜歯を行います。

 

なぜ、上下左右を4本一気に抜かないのかというと、体への負担が大きいからです。

骨を削らない簡単な親知らずであれば、一気に抜くことも可能でしょう。

骨を削らないといけない親知らずの抜歯の場合、手術後に腫れや痛みなどの炎症反応が出ます。

 

親知らずの抜歯は、基本的に上下で行い、左右では行いません。

左右の両方を一気に抜くと、両方が腫れてしまうのです。

片側であれば、腫れたとしても、逆側で食べることができます。

しかし、両方が腫れてしまうと、口が開かなくなってしまうのです。

 

 

腫れや痛みなどの炎症反応は、抜歯後2、3日をピークにして、7~10日かけてゆっくりと引いていきますよ。

ちなみに糸を抜くのは、5~10日です。

仕事や家事が忙しくて通院できない場合は紹介してくれた歯科医院で糸を抜いてもらうこともできます。

 

症状がおちついているのであれば、糸を抜いたら終わりです。

まだ症状が続いているようなら、症状が落ち着くまで通院してもらうこともあります。

 

先ほど、親知らずの抜歯は基本的に上下で行い左右では行いません、と言いましたが、一気に上下左右を行うこともあります。

全身麻酔で親知らずの抜歯を行う場合です。

通常の外来で行う抜歯が局所麻酔と入院して手術場で行う全身麻酔の抜歯にはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

見ていきましょう。

 

 

局所麻酔 vs 全身麻酔のメリットとデメリット

手術場で全身麻酔をかけて抜歯するより、外来で抜歯したほうが私は抜きやすいです。

手術場の手術台は、外来のイスように微妙な角度調整ができなかったり、全身麻酔で意識がないと、角度調整が難しいのと使っている器具が少し違うからです。

 

入院して抜歯する場合、4本一気に抜歯することができます。

入院する場合は、手術後の出血や腫れなどの状態を観ることができます。

またステロイドと呼ばれる炎症を抑える薬も使うことができるので、一気に抜歯することができるのです。

  時間 お金 恐怖感 体の負担 抜歯 入院日数

局所麻酔(外来)

×

1 or 2

静脈鎮静麻酔(入院) 4 1泊2日
全身麻酔(入院) × × × 4 1泊2日

静脈鎮静麻酔はリラックスする薬を点滴で入れるので意識はありますが、恐怖感がなくなる方がほとんどです。

 

全身麻酔には心電図、採血、胸部レントゲン写真などの検査をしなくてはなりません。

このように全身麻酔は、時間やお金、麻酔をかけること自体が体に負担になります。

 

初診日に抜くことができる歯科医院もありますが、ちょっと注意して欲しいことがあります。

 

初診日に抜くなら口腔外科認定医・専門医がいる歯科医院で

ホームページを見ていると、大きな病院でなくても初診日に親知らずを抜くことができる歯科医院もあります。

大学病院や総合病院を受診しないのであれば、できれば口腔外科専門医がいる歯科医院で親知らずの抜歯をした方がいい、と私は思います。

 

 

抜歯は手術なので、何が起こるかわからないからです。

確かに、口腔外科認定医がいれば、親知らずの抜歯に心配はいりません。

でも、緊急の処置が必要なときに、きちんと対応できるのは口腔外科専門医・指導医クラスの先生です。

 

歯科医院のホームページで顔写真と経歴をチェックすることができるはずです。

 

もちろん、口腔外科専門医・指導医の資格がなくてもすごい腕をもった先生はたくさんいらっしゃいます。

ただ一般の方がそれを判断するのは、けして簡単ではないでしょう。

 

【お願い】大学病院や総合病院は教育機関でもあるため、口腔外科認定医を目指す若手が上級医と一緒に抜歯をすることがあります。

私もそうでした。

上級医の責任の下に比較的簡単な親知らずは若手に治療させていただくことがあります。

もちろん、説明して同意を得た上です。

 

 

まとめ

今回、「両方の親知らずの抜歯回数について教えて!一度に抜くの?二回に分けるの?」という質問に答えました。

ほとんどの方が2回目に受診したときに抜歯します。

 

診察・手術の時間を十分に確保できて、炎症症状がなくて、検査と説明の同意を得られれば当日に抜歯できますが難しいことが多いです。

また、親知らずを2本抜歯することになった場合、上下であれば、両方を一度に抜歯するができますよ。

全身麻酔で親知らずを一気に抜歯することもできますが、時間やお金、麻酔をかけること自体が体に負担になりますので、メリットデメリットをよく比較してみてくださいね。

 

ホームぺージを見ると、初診日に親知らずの抜歯してくれる歯科医院もあります。

大学病院や総合病院を受診しないのであれば、口腔外科専門医がいる歯科医院で親知らずの抜歯をした方がいい、と私は思います。

緊急の処置が必要なときに、きちんと対応できるからです。

 

歯の抜歯は一生もの。

忙しいからこそ、大事にしたいですね!

 

 

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口腔外科医(歯科医師)。医学博士。北海道大学卒業後、 日本一短命の青森県に戻り、地域医療に従事。バルセロナ、メルボルン、香港など国内外の学会で研究成果を発表。「口」と体を健康に保つ方法を体系化、情報を発信している。趣味は読書(Amazon「ベスト100レビュアー」)とハンドボール。
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