2018/02/15
幸福な生活は仕事の成功?理想の結婚?【自由、自己実現、友情・愛情】の3条件からあり方を問う本
こんにちは、古舘 健です。
学生のとき、幸福は分数のようなもの、と先生が教えてくれました。
感謝したり、大事にしたりすることができれば、分母が小さくなる。分母が小さくなれば、1(幸福)に近づくけれど、分母が大きくなれば1(幸福)から離れていくからね、と先生は言いました。
分数は、一つのものをいくつに分けたかが分かる数字です。
上の数字が分子で、下の数字が分母になります(下図)。
(分子)/(分母)
例えば、分子が2で、分母が5なら、2/5 = 0.4になりますし、分母が2なら2/2 = 1になります。
分子が同じなら、分母が大きくなれば、1から遠ざかりますし、分母が小さくなれば、1に近づくということです。
今の現状が分子で、幸福が1だとしたら、たとえ今がどのような現状だとしても分母を小さくすれば幸せで<ある>と先生は教えてくれたのでしょう。
自分が知る限り幸福の条件を論じた本はあまり多くありません。
以前読んだ「幸福の哲学 アドラー×古代ギリシアの智恵」の中に以下の箇所がありました。
「成功や名誉、富などは幸福の条件ではなく、幸福であるためには必要ではない。それらがあっても困るわけではないが、何かの現実を待たなくても、成功しなくても、すでに幸福で<ある>のであり、何かが人を幸福にするわけではない。」
参考:[幸福の哲学 アドラー×古代ギリシアの智恵 (講談社現代新書)] (P223-224) 岸見一郎(著) 講談社
幸福に<なる>条件はなく、すでに幸福で<ある>と、アドラー心理学の第一人者、岸見一郎氏はいいます。
本書は、それとは真逆の立場をとります。
人生におけるお金、仕事、人間関係という3つのインフラからポートフォリオを組み、幸福のインフラ設計を提案する本です。
3つの幸福の条件を提示し、社会の課題を独自の視点から考察した本でもあります。
著者があげる幸福の条件は以下の3つです。
「① 自由
② 自己実現
③ 共同体=絆
この3つの幸福の条件は、3つのインフラに対応しています。
① 金融資産
② 人的資本
③ 社会資本(P23)」
また「セックスのデフレ化と最貧困女子」「ジャパニーズファースト」「マックジョブとクリエイティブクラス」「愛情空間と貨幣空間」「プライスレスとプライサブル」「個人と間人」などの言葉から社会が抱える課題について知ることができました。
自分が一番ためになったのは、仕事をマックジョブとクリエイティブクラスに分け、クリエイティブクラスのうち、拡張不可能な仕事をスペシャリスト、拡張可能な仕事をクリエイターがある、という視点です。
「研究者は、お金のためと割り切ってマックジョブするひとと、マックジョブに意義を見出すひとの幸福度を測ってみました。結果はおわかりのとおり、仕事で自己実現する労働者の幸福度が圧倒的に髙かったのです。(中略)
ただし、ここには落とし穴があります。清掃の仕事は時間給なので、生活のために仕方なく働く(不幸な)清掃員にも、自己実現のために献身的に働く(幸福な)清掃員にも、病院は同じ時間あたりの給与を払えばいいだけです。すなわち経営者は、意図的かどうかは別として、自己実現を利用して労働者のやりがいを“搾取”できるのです。(P115)」
マックジョブとクリエイティブクラスという視点は、人的資本(仕事)と社会資本(人間関係)とどのように向き合うを考える良いきっかけになりました。
著者が勧める3つのインフラを活用した幸福のポートフォリオは以下のようになります。
「①金融資産は分散投資する。
②人的資本は好きなことに集中投資する。
③社会資本は小さな愛情空間と大きな貨幣空間に分散投資する。(P267)」
冒頭でもご紹介しましたが、アドラー心理学の第一人者、岸見一郎氏は「幸福の哲学 アドラー×古代ギリシアの智恵」の中で幸福に<なる>条件はなく、すでに幸福で<ある>といいました。
幸福で<ある>ためには、自分のもっているお金、仕事、人間関係という3つのインフラと向き合う覚悟が必要なのかもしれませんね。
本書は、社会の現状を知り、自らのあり方を考えるきっかけになる本です。
ぜひ読んでみてください。
以下は、本書の抜粋です。ためになった箇所を一部、抜粋しご紹介します。
P80-81
「金融資産の価値が減るということは、相対的にその他の資本=資産の重要度が増していくということです。金利収入を期待できないのですから、金融市場から富を獲得するよりも人的資本を労働市場に投資する方がはるかに効果的なのは明らかです。
人的資本については次章でより詳しく考えますが、大事なことだけ述べておきましょう。
マイナス金利の世界では、賢いひとは利潤を最大化するために金融資本よりも人的資本を有効活用する、すなわち『働く』のです。」
P106
「そもそも日本的な雇用制度では、『本社採用』『現地採用』という言葉に象徴されるように『ジャパニーズファースト』が当然とされ、国籍の異なる人材を平等に扱うことができません。現地採用の社員が本社に異動することはないし、現地法人のトップや幹部は常に本社から派遣された(現地の言葉はもちろん英語すら話せない)日本人社員です。ここまで『差別』が露骨だと、外国人社員が魅力を感じるはずはありません。
(中略)人材獲得競争で常に負けつづけるのですから、どれほど本社の日本人社員が(無駄な)努力をしたところで、現地のビジネスを拡大することなどできるはずもないのです。」
P194
「私たちは、無意識のうちに『お金は汚い』と思っています。しかしなぜ、このような奇妙な感情を持つようになったのでしょう。お金がなければ生きていけないことをみんな知っているはずなのに。
それは、お金が愛情や友情といった大切な価値を破壊するからです。
友たちの家に招かれて、プレゼントの代わりに現金を渡せばびっくりされるでしょう。恋人とのデートで、セックスの後に3万円払えば売春になってしまいます。3万円の指輪をプレゼントすれば、すごく喜ぶのに。」
P224
「アメリカの政治学者ロナルド・イングルハートなどが中心となって1980年代から5年ごとに行われている『世界世論調査』は、『もっとも信頼度が高い国際比較調査』とされています。そのなかに『自分の人生をどの程度自由に動かすことができるか』という項目がありますが、日本人は調査対象57カ国中最下位です(2010年、図27)。
自由度は『人生はまったく自由にならない』を『1』、『人生はまったく自由になる』を『10』として数値化されますが、日本人の人生の自由とを時系列で見ても、1990年のバブル最盛期が現在より自由だったわけではありません。就業別の自由度では6点を超えているのは自営業と学生だけで、正規/非正規の労働者や無職はもちろん、主婦や定年後の高齢者の自由度もサラリーマンより低くなっています(池田謙一著著『日本人の考え方 世界の人の考え方』勁草書房)。」
P249
「骨の髄まで社会的な動物であるヒトのネットワークは、ちょっとしたきっかけで感情を『伝染』させるのです。
『感情の伝染』は、町の健康調査でも見つかっています。煙草を吸わない健康なひとの幸福度は高く、不健康な喫煙者の幸福度は低いのでが、幸福なひとは幸福な隣人と、不幸なひとは不幸な隣人とつき合う傾向があり、ネットワークの本線にいるほど幸福度が高いことがわかっています。ヒステリーと同様に、幸福も不幸も『伝染』するのです。」
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
◆目次◆
Prologue あなたがいまここに存在することがひとつの奇跡
Part 0 「お金持ち」と貧乏人の三位一体幸福論
Chapter 1 幸福の3つのインフラ
Chapter 2 「最貧困」から人生を考える
Chapter 3 人生の8つのパターン
Part 1 自由のための金融資産
Chapter 4 お金と幸福の関係
Chapter 5 マイナス金利の世界
Part 2 自己実現のための人的資本
Chapter 6 人的資本は「富の源泉」
Chapter 7 クリエイティブクラス とマックジョブ
Chapter 8 サラリーマンという生き方
Chapter 9 オンリーワンでナンバーワンの戦略
Chapter 10 超高齢社会の唯一の戦略
Part 3 幸福のための社会資本
Chapter 11 友達とはなんだろう?
Chapter 12 個人と間人
Chapter 13 うつは日本の風土病なのか
Chapter 14 幸福になれるフリーエージェント戦略
Chapter 15 「ほんとうの自分」はどこにいる?
Epilogue それでも幸福になるのは難しい
あとがき
さいごまで読んでくださり、ありがとうございます!
ぜひチェックしてみてください。
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