2018/03/10
後輩部下のモチベーション改善。マネージャー・上司のコミュニケーション本(マネジメント・指導方法)
こんにちは、古舘 健です。
先日、読んだ「ハーバード あなたを成長させるフィードバックの授業」の中に以下の記述がありました。
<自分がフィードバックを与える側のときは、『建設的な批判』や相手のためになる指導を与えていると思っている。問題の原因を正確に特定できているという自信があり、自ら進んでそれを発表する。
ところが、この種のフィードバックを受け取る側になると、相手の発言は何一つ『建設的』ではなく、すべて非難に聞こえる。>
参考:ハーバード あなたを成長させるフィードバックの授業 P149 ダグラス・ストーン (著)、シーラ・ヒーン (著)、花塚 恵 (訳) 東洋経済新報社
ハーバード・ロースクールの講師、ダグラス・ストーン氏とシーラ・ヒーン氏によると、フィードバックを与える側は「感謝」や建設的な「指導」をしていると思ってる。
しかし、フィードバックを受ける側は「評価」されていると感じている。
この認識のズレが誤解や不満を生むということです。
では、どうしたら適切なフィードバックを与えたり受けたりできるでしょう。
その方法論を教えてくれるのが本書です。
(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)
本書は「1on1ミーティング」を教えてくれる本です。
「1on1ミーティング」は、定期的に部下のために1対1の対話の時間をつくることです。
日本の数多くの組織で行われているは、コミュニケーションではなく、結果を出すための「情報交換」でしかない、と著者はいいます。
上司やマネージャーの建設的な「指導」を部下や後輩は「評価」されていると感じてしまう。
このフィードバックのズレもコミュニケーションではなく、情報交換になっていることから生じているのでしょう。
著者は、月1、30分の「1on1ミーティング」で組織変革を行う組織人事コンサルタントです。
2015年から2017年の「働きがいのある会社」中規模部門第1位に選ばれた株式会社VOYAGEのフェローです。
VOYAGE GROUPの営業本部長、人事本部長、子会社役員を歴任され、独立されました。
そんな著者の「1on1ミーティング」の具体的なノウハウをパッケージ化したのが本書です。
本書の魅力の一つは具体的であること。
「1on1ミーティング」の時間配分、質問例や質問の意図、「MGC (MUST-GET-CAN)目標設定法、など心がまえから方法論まで具体的に学ぶことができます。
「レベル4 価値観を探る
『週末は何をしているのが楽しいの?』
『友達みんなでワイワイBBQしたりして騒ぐのが好きです』
(中略)このように、雑談で知ることができる内容『好きなことや苦手なこと』『楽しいことや苦痛なこと』というのは、その人の価値観を反映しているものです。雑談を媒介にその人の価値観を知る機会でもあるので、チャンスがあれば、雑談の質を高めていって、部下の深い部分まで理解していくことが可能なのです。(P91-92)」
向き合う時間を作ってくれて、対話の内容を記録し、キャリアだけでなくプライべートもケアしてくれる。
もしこんな上司がいたなら、部下としても心から仕事を頑張れそうですね。
時代の変化で、上司と部下が一緒に過ごす機会が明らかに減りました。
私の上司の話を聞くと、上司が新人の頃は、上司の上司と毎日のようにご飯を食べたり、飲みにいったりしていたそうです。
だとするとちょっと皮肉ですが、以前は居酒屋や喫煙所で行われていたプライベートを含めた対話が、失われてしまった上司と部下のコミュニケーションの機会であり、「1on1ミーティング」が今、必要とされる理由なのかもしれませんね。
逆に、専門的な情報に手軽にアクセスできるようになったため、部下の方が専門的な情報をもっている、といったことすら起こりえます。
「私は、ずばり「上司と部下のコミュニケーションの取り方が変わらないから」だと考えます。他方で社会的背景は急激に変わっているのです。新入社員は、ゆとり世代などと呼ばれて資質が変わってきています。また、ハードな労働環境の会社はすぐに「ブラック企業」などと呼ばれてしまい、「働き方」に対する環境や個人の感覚も激変しています。(P4)」
個人が重視されるようになり、価値観が多様化したため、お互いのプライベートを把握していないと、上司と部下の間で誤解が生じてしまうかもしれません。
期待していた部下に小さな不満や不安が蓄積されていき、ある日突然……を防ぐだけでなく、優秀でない部下も育つので、結果的にマネージャーの仕事を減らすことになる、と著者はいいます。
本書は、定期的に一人ひとりと話す場を設けましょう、という内容ですが、「1on1ミーティング」を定例化してはいけない、と著者はいいます。
「ですから、1on1の時間を定期的にスケジュール化はしまうが、内容については定例化しないように気をつけなければなりません。定例化するのは1on1の時間自体ではなく、1on1を『準備する時間』にすると良いでしょう。
さらに、もし1on1がなんらかの事情でキャンセルになったときは、必ずリスケジューリングして予定を取り直すようにしてください。クライアントのアポイントと同じです。(P163)」
定例化してしまうと、血が通わなくなってしまうから、と著者はいいます。
世界で最も人材獲得や育成に力を入れるシリコンバレー企業では、毎週30分「1on1ミーティング」を行う文化があるそうです。
そんなシリコンバレー式のマネジネント手法を学ぶことができるオススメの一冊です。
私も信頼を積み上げるために「1on1ミーティング」を診療や研究に取り入れていきたいです。
部下をもつ方はもちろん、これから先輩になる方もぜひ読んでみてください!
以下は、本書の抜粋です。ためになった箇所を一部、抜粋しご紹介します。
P29
「以前私は、ある企業の退職者に第三者としてインタビューを実施しました。その際にわかった、退職者に共通した隠れた退職理由がありました。それは『悩んだときに相談する人がいなかった』ということです。人は働きながら色々な思いが生じてきます。職場の雰囲気が合わない、評価に納得がいかない、成績が伸び悩んでいる。こういった話を放置しておくと職場へのリスクは一気に高まります。」
P109-110
「この『間接的なほめ方(AさんがBさんのことほめてたよ)』というのは『最高のほめ方』なのです。当事者を直接ほめるよりも嬉しさが増してくるのです(上図)。
なぜなら、『陰でそんなふうに良く思ってくれてたんだ』とBさんがAさんに好印象を持つようになり、それを伝えてくれた上司に対しても交換を持つからです。さらにBさんは、自分の良い面が陰でドンドンと広がるイメージを持ち、気分が良くなります。結果、関わる人すべてにプラスの効果をもたらして、部署全体に良い影響をもたらします。(中略)1on1を活用することで、1粒で10にも20にもなる美味しい効果が得られます。『最近いいなって思う人いる?』を口癖にしていきましょう。」
P115-116
「②現状業務の改善
□今の業務で困っていることって何かある?
(少し短期の視点で問題になっていることの確認)□今の業務全体で難しいことってどんなことなの?
意外に難しいなー?ってことはある?
(業務全体の中で、無意識に時間や労力がかかっているところを意識化して、アドバイスできるものがあれば確認する)」
P121-122
「このように、上司が答えを持っていて正論を語り、それを聞いた部下は『そうですね』としか言えずにテンションが下がり、なんとなくギクシャクした雰囲気が流れます。それを見た上司は、『わかってないのか?』と、さらに同じアドバイスを重ねていきます。そうすると、部下のモチベーションがさらに下がっていくのです。」
この根底にあるのは上司は答えを持っていて部下は持っていないという前提です。」
◆目次◆
第1章 なぜ、今1on1ミーティングで人も会社も変わるのか
組織で行われているコミュニケーションとは結果を出すための『情報交換』をしているだけ
個人に焦点を当てた『対話』が継続的な結果をもたらす
『不機嫌な職場』はまだまだ存在する
なぜ、今1on1ミーティングが必要なのか?
『会社起点』で考える会社は衰退し、
『個人起点』で考える会社が選ばれる
1on1ミーティングが行われていない6つの理由
1on1ミーティングで実現する8つのこと
シリコンバレー企業では仕事用の関係を維持する重要な方法として1on1ミーティングは常識
第2章 1on1ミーティングで何を話すのか―部下と信頼を構築するために
「1on1実践マップ」で全体像をつかむ
① プライベート相互理解
② 心身の健康チェック
③ モチベーションアップ
第3章 1on1ミーティングで何を話すのか―部下の成長を支援するために
成長支援ステージ
④ 業務・組織課題の改善
⑤ 目標設定/評価
⑥ 能力開発/キャリア支援
⑦ 戦略・方針の伝達
第4章 1on1ミーティングを始めてみよう
最初のスケジューリングですべてが決まる
空間をプロヂュースする
クラウドで『個人データベース』をつくる
『実践シート』を使って最終準備
1on1ミーティングの実際
まとめとアクションプラン
1on1ミーティング後の行動で組織が変わる
1on1を継続させるポイント
おわりに 自分とも1on1ミーティングをしよう―セルフ1on1のすすめ
参考:
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
さいごまで読んでくださり、ありがとうございます!
ぜひチェックしてみてください。
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