2018/02/15
新しいアイデアをビジネスや事業に変える9つのメソッドを教えてくれる本
こんにちは、古舘 健です。
2018年2月3日、青森市のグラビティコワークで開催された「東京じゃ話せない『禁断のウェブライティング』−その筋のプロが勢揃い−」に参加しました(*1)。
Webメディア業界で活躍する4人の豪華な講師陣のお話はとてもためになりました。
ためになった話の一つに、<「いいコンテンツ」とは?>がありました。
「いいコンテンツ」には前提条件があります。
誰が読み手で、どんな状況におかれているのか明確にすること。
そして、読み手のどんな欲求や願望、不満や不安を解決し、どんな行動を起こさせるのかを明確にすることです。
読み手の欲求や願望だけでなく、不満や不安に気づくこと大事です。
欲求や願望、不満や不安が大きければ、行動を起こさせるエネルギーも大きくなりますね。
大きな「不」に気づくことを、ビジネスチャンスとして捉えている会社があります。
数多くの新規事業を生み出す「リクルート」です。
「リクルート」のメソッドが体系化された本を探していたところ、本書を見つけました。
「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶブックランキング2017」の第7位にランクインしていた本です(*2)。
(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)
本書は、「リクルート」を日本のトップコンサルタントが分析した本です。
本書を読んだとき、「BUSINESS FOR PUNKS/ビジネス・フォー・パンクス」の以下の箇所を思い出しました(*3)。
<始めるのはビジネスじゃない。革命戦争だ。
会社は失敗する。会社は死ぬ。会社は忘れられる。
だが、革命が死ぬことはない。
だったら会社ではなく、革命を始めればいい。>
参考:ビジネス・フォー・パンクス(P21)James Watt(著) 日経BP社
「BUSINESS FOR PUNKS/ビジネス・フォー・パンクス」で紹介されていた革命は、大企業によって均質に商品化されたビールを、職人による高品質なビールにとりもどす革命でした。
革命が必要な状態、つまり、あるべき姿と現実のギャップがある状態を、本書では「不」が存在するといいます。
「『ニーズ』は、言葉通り、お客様が求めているもの。一方の『不』にはそれだけでなく、リクルートが考える、あるべき社会の姿が反映されている。(中略)しかし、産業構造が『あるべき姿』でないために、必要以上の価格を消費者が支払っているのであれば、価格が高いことは解消すべき『不』になる。(P58)」
「ボストン コンサルティグ グループ(BCG)」の日本代表の著者は17年間、パートナーとして「リクルート」に関わってきました。
そんな著者が 「リクルート」で実際に使われているメソッドを教えてくれます。
例えば、リボンモデル。
リボンモデルは、「リクルート」の立ち位置と、個人(カスタマー)と企業(クライアント)との関係性を明確にし、全体像を俯瞰できる考え方です。
他にも、事業を「1→10」にスケールアップする際にKPI(重要業績評価指標)の中でも勝ち筋に直結する「価値KPI」を見極めるがためになりました。
私が本書の中で一番ためになったのは、以下の部分です。
「また、『お前はどうしたい?』に答え続けることで、社員の誰もが今抱えている仕事に対する強烈な愛着や、『社会の不を解消する』というミッションに対する強い使命感を抱くようになる。
『お前はどうしたい?』という問いかけが、『ほかの誰でもない、自分自身が、この仕事の責任者であり当事者である』という強い意識を熟成している(P219)。」
組織では仕事が分業化されています。
割り当てられた仕事をこなすことだけに意識がいきがちです。
私の場合、手術の器材の準備や後片付けはスタッフの仕事で、メスで切ったり、バーで骨を削ったり、糸で縫ったり手術をするのが私の仕事です。
自分の仕事以外が受け身になってしまっていたことに本書を読んで気づきました。
定例化されてしまった仕事の中でも「お前はどうしたい?」と問い続けることで、主体的な視点を得られそうです。
自分は、何ができるのか。
どんな貢献ができるのか。
「お前はどうしたい?」という視点は、すべての人がもちたい視点ですね
新規の事業や市場を次々と生み出す「リクルート」のメソッドが体系化されていてワクワクする本でした。
本書は、日本のトップコンサルタントが「リクルート」を分析し、アイデアを事業に変える3ステージにおける9つのメソッドを解説してくれる本です。
ぜひ読んでみてください。
以下は、本書の抜粋です。ためになった箇所を一部、抜粋しご紹介します。
P36
「リボンモデルは、蝶ネクタイのような形をしている。左側の三角が、個人や一般の消費者(カスタマー)、右側の三角が、企業や事業者(クライアント)で、両者をつなげる結び目がリクルートだ。
(中略)リクルートの役割は、左側の個人と、右側の企業を、両端でより多く集め、より確実に動かしてたくさん結びつける『ベストマッチング』の仕組みを提供することだと定義される。」
P76
「『ユニークかどうか』の問い方も特有だ。何となく『珍しそうだね』という程度では『ユニーク』とは言えない。『国内で初』『世界で初』レベルを求める。
さらに特徴的なのが、『志』だ。単に『儲かりそうだから』という理由だけでは、新規事業として取り組むは値しないとみている。あるべき社会の姿に照らし合わせ、真に解消すべき『不』が存在しているのだということを、説得力を持って伝えられるか。そして、自分自身がその解消に向けて、粘り強く取り組む覚悟を持っているかが問われている。」
P101
「2つ目は、『お財布』が明確であることだ。『誰がお金を出すか』だけでなく、『誰が、どのお財布からお金を出すか』まで突き詰める。
お金を出すのが個人であれば、これまで雑誌を買うのに使っていたお金を振り向けるか、交通費として使っていた分を振り向けるか、法人であれば、広告宣伝費か販売促進費か。これまで何に使っていた予算を、どのように削減して、新しいサービスに振り向けてくれるか、具体的なシナリオが描けるかどうかまで問う。」
P132-133
「その事業を知らなくても、たった一つの質問で、判断できると語っている。
それは、所属メンバーに対して『あなたの組織におけるKPIの目標数値を知っていますか?』と尋ね、それにきちんと答えられるかどうかを見ることである。(中略)そのようなKPIは、当然わすれがちで、実行もされないためすぐに形骸化する。そもそも実行すらしていないのだから、どこが悪かったかの検証も不可能であり、結果『KPIなんて役に立たない』という不信感につながってしまうのだ。」
◆目次◆
序章 なぜ、あなたの会社の新規事業はうまくいかないのか
1 企業を悩ます「5つの症状」
2 リクルートの新規事業開発を支えるコンセプト
第1章 ステージ1「0→1」
―「不」を発見し、事業性を見極める
1 メソッド① 不の発見
2 メソッド② テストマーケティング
3 メソッド③ New RING(インキュベーション)
4 トップダウンから失敗してきた理由
1章まとめ
コラム シリコンバレーより前からあった、事業開発手法
第2章 ステージ2「1→10」
―勝ち筋を見つける
【Case】プラットフォームへの転換で成功したサロンボード
1 メソッド④ マネタイズ設計の3つのポイント
2 メソッド⑤ 「フィジビリ」で「価値KPI」を探し出す
3 メソッド⑥ 「ぐるぐる図」を回す
4 「勝ち筋」が見つからなければ、スパッと見切る
5 フィジビリ終了、「1」の卒業
2章のまとめ
コラム 良いKPI・悪いKPI
第3章 ステージ3「1→10」その2
―爆発的な拡大再生産
【Case】「札幌版」を「型化」し、急成長を遂げた「ホットペッパー」
1 メソッド⑦ 「価値マネ」をしつこくやりきる
2 メソッド⑧ 「型化」を突き詰める
3 メソッド⑨ 小さなS字を生み出し続ける
4 減衰を乗り越え、新たな成長の実現へ
3章のまとめ
コラム 不確実性の高い市場で生き残る
第4章 10を超えて、さらに飛躍するために
1 忍び寄る「成功のワナ」
2 競争軸にスピードを加える―タイムベース競争
3 顧客価値の置き換え、約束する価値の進化
4 周辺領域への拡大
5 他社のビジネスプロセスに入り込む
4章のまとめ
コラム 自走するアジャイル組織
第5章 経営陣の役割―
「リクルートモデル」を活かすために
1 人を活かす―
リボンモデルを刷り込み、自主性を解放させる
2 若さを保つ―ナレッジを生み出し、競わせ、称賛する
3 器をそろえる―
将来必要な組織能力を先読みし、内に取り込む
5章のまとめ
コラム 「死神集団」を確保せよ
終章 新規事業を育てる企業風土
さいごまで読んでくださり、ありがとうございます!
ぜひチェックしてみてください。
(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)
参考:
*1 2月3日(土)開催!「東京じゃ話せない『禁断のウェブライティング』−その筋のプロが勢揃い−」
*2DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶ ブックランキング2017【無料小冊子】
*3
*5
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
◆編集後記◆
2018年2月3日、青森市のグラビティコワークで開催された「東京じゃ話せない『禁断のウェブライティング』−その筋のプロが勢揃い−」に参加しました。
安田さん、朽木さん、鳴海さん、松尾さんのお話はとてもためになり、6660文字(A4で17枚)もメモしてしまいました!
セミナー後にスライドをくれると言ってくれたにもかかわらず(笑)
安田さんの編集長ブログはこちら。
朽木さんが担当した記事はこちら。
鳴海さんのポッドキャストはこちら。
松尾さんの書かれた本はこちら。
毎日のブログ更新を目指していましたが、目的と目標が逆になっていたことに気づきました。
このブログに来てくれた方の「不」を解消するためにブログのあり方を見直します。
安田さん、朽木さん、鳴海さん、松尾さん、そして主宰の「あおもりIT活用サポートセンター」の皆さま、ありがとうございました!
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