2018/03/05
舌癌ではないかと不安です。口内炎との違いを教えてください
先日、ある女性からこんな相談を受けました(質問内容をアレンジしています)。
舌の横のところが痛いです。
だまっていても痛くないのですが、ご飯を食べたり話をしたりして、舌を動かすと痛くなります
口内炎かなぁと思い調べていると、舌の横の痛みが舌癌(ぜつがん)の可能性があると知り、とても不安になってしまいました。
舌癌ではないかと今、とても不安です。
舌癌について教えてください(10代女性)。
確かに、舌の横は舌癌(ぜつがん)ができやすいところです。
口内炎かと思っていたら舌癌だったらどうしよう。
2-3日たっても口内炎の症状が改善されないと不安になってしまいますよね。
でも、そんなに心配しないでください。
舌癌の患者は、2005年の段階で全国約6900人。
すべての癌の約1%と推定されています(*1)
舌癌かもしれないという不安を抱えながらも、学校や仕事が忙しくて病院にもなかなか通うことができない、という方のためにこの記事を書きました。
今まで何も症状がなくて2~3日前から急に痛くなったのであれば、舌癌(ぜつがん)の可能性は低いですよ。
このように舌癌と口内炎の違いがわかれば、不安はグッと減るはずです。
まず口内炎について、お話ししていきましょう。
口内炎とは
まず口内炎について簡単にお話します。
口内炎は、何らかの原因で口の粘膜に起こる炎症(えんしょう)です。
たとえば、細菌の感染や刺激による口内炎がありますね。
ブツブツと小さな水ぶくれをたくさんつくるウイルスによる口内炎もあります。
一般的に「口内炎」と呼ばれるのは、アフタ性口内炎(Aphthous ulcer)です。
(許可を得て掲載:転載不可)
アフタは、小さく口の粘膜がえぐれた潰瘍(かいよう)で、丸く赤みがあります。
ふれると痛みがあって、表面が白っぽい薄い膜があります(*2)。
口内炎は、口の粘膜に起こる炎症(えんしょう)と覚えておいてください
次に、舌癌についてお話しましょう。
舌癌とは
舌癌(ぜつがん)は、舌にできる癌です。
がんは、細胞が自分から無秩序に増え、ほかの組織に侵入したり散らばったりして広がる病気です。
細胞自ら死ぬことがなくなり、体を守るはずの免疫をのがれ、炎症(えんしょう)でパワーアップし、栄養の血管をよびこむこともできます。
舌癌の診断は、生検術(せいけんじゅつ)を行います。
局所麻酔をして一部を取らせてもらい、顕微鏡で確認します。
舌癌の6つの特徴と口内炎との違い
舌癌(ぜつがん)の特徴を6つまとめました。
1)部位
2)硬さ
3)痛み
4)年齢
5)性別
6)見た目
一つずつ簡単に説明していきますね。
部位
舌癌ができやすいのは、舌の横です。
舌の先や中央(舌背/ぜっぱい)にはほとんどできません。
舌の横の奥にポコッと盛り上がった部分を舌癌と間違って受診される方がいます。
舌の横の奥には舌の乳頭(にゅうとう)やリンパ組織があります。
舌を前にべ~と出して、左右に動かして舌の横を見てみましょう。
左右両方にあれば心配いりませんね。
硬さ
舌癌の周りは硬くなります。
先ほどお話したようにがんは細胞が自分から無秩序に増えます。
そのため、がん細胞の密度がぎゅ~と増えて硬くなってしまうのです。
口内炎は、細胞の数が増えないのでやわらかそうですね。
痛み
舌癌は、最初に痛みが出ることはあまりありません。
他の癌と違うのは、少し大きくなってくると、痛みを感じることがあることです。
口内炎は最初から痛みがありますね。
今まで何も症状がなくて2~3日前から急に痛くなったのであれば、口内炎の可能性が高そうですね。
年齢
舌癌のできやすい年齢は、50~60歳です(*2)。
まれですが、20~40歳の若い方にもおこります。
口内炎に年齢はほとんど関係がないですね。
性別
舌癌は男性が女性の2倍なりやすい、と報告されています(*3)。
舌癌のリスク因子は、飲酒やタバコ(*1)。
アルコールや喫煙と男性が舌癌に2倍なりやすいことは無関係ではなさそうですね。
口内炎に性別はほとんど関係がないですよ。
見た目
がんは一つの病気ではありません。
舌癌も同じです。
舌癌という診断がついても一つひとつ違います。
その中でも共通している見た目があります。
表面がボコボコしていたり、えぐれや盛りあがっていたり、白や赤の斑点があったりします。
周りとの境界がぼやっとしたり、ふれると出血しやすかったりしますよ。
口内炎は平らで周りとの境界がくっきりしています。
先日、30代の男性が、舌の横の痛みが2~3日続いていて舌癌かも、と受診されました。
見てみると、アフタ性口内炎のようでした。
(許可を得て掲載:転載不可)
1週間程度、様子を見てもらったところ、症状は良くなりなくなってしまったそうです。
口内炎が舌の横にできる方もいます。
口内炎にはいろいろな原因がありますが、舌を咬んでもできます。
ガムを噛んだときや食事のときに舌を間違って咬んでしまったかもしれない、という方は安心ですね。
まとめ
いかがだったしょうか。
少しでも不安は解消されましたか?
口内炎は、口の粘膜に起こる炎症(えんしょう)。
一方、がんは、細胞が自分から無秩序に増え、ほかの組織に侵入したり散らばったりして広がる病気です。
まず、7日間様子をみてみましょう。
症状が改善しなければ、診断をつけるために生検術(せいけんじゅつ)します。
局所麻酔をして一部を取らせてもらい、顕微鏡で確認します。
日に日に薄い皮が表面にできてくるようであれば大丈夫ですよ!
症状がよくなるのであれば、癌ではありませんものね。
舌癌かもしれないという不安を抱えながらも、学校や仕事が忙しくて病院にもなかなか通うことができない、という方のためにこの記事を書きました。
舌癌と口内炎の違いがわかれば、不安はグッと減るはずです。
この記事が少しでも力になったら嬉しいです。
参考:
*1 科学的根拠に基づく 口腔癌診療ガイドライン2013年版 第2章 疫学(P12・16) 日本口腔腫瘍学会 口腔癌治療ガイドライン改訂委員会 / 日本口腔外科学会 口腔癌診療ガイドライン策定委員 金原出版
*診療ガイドラインはネットでも無料で公開されていますよ。
口腔がん診療ガイドライン(日本癌治療学会)
*2 口腔外科学 第3版 第6章 口腔粘膜疾患(P164)白砂兼光・古郷幹彦編著 医歯薬出版
*3 カラーアトラス サクシンクト口腔外科学 第3版 学建書院
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