2018/02/16

むし歯がある親が子どもにキスをすると、むし歯菌はうつりますか?

 

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口腔外科医(歯科医師)。医学博士。北海道大学卒業後、 日本一短命の青森県に戻り、地域医療に従事。バルセロナ、メルボルン、香港など国内外の学会で研究成果を発表。「口」と体を健康に保つ方法を体系化、情報を発信している。趣味は読書(Amazon「ベスト100レビュアー」)とハンドボール。
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むし歯菌をうつしたくないからキスや口移しをしないようにしている、という話を聞くことがあります。

むし歯がある親が子どもにキスをすると、むし歯菌はうつってしまうのでしょうか。

それともむし歯菌はうつらないのでしょうか。

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今回は「むし歯がある親が子どもにキスをすると、むし歯菌はうつりますか?」という疑問にお答えします。

1)子どもは生まれる前は無菌
2)なぜ3歳まではむし歯菌がうつりやすいのか?
3)口の中の細菌は口腔細菌フローラをつくっている
4)3歳までにむし歯菌に感染しなければ、一生むし歯にならないの?
5)歯を失う原因はむし歯だけじゃない!?
まとめ

 

1) 子どもは生まれる前は無菌

子どもにむし歯菌もうつる可能性があります。

なぜならば、子どもは生まれる瞬間は無菌状態だからです。

歯がはえてきたときに、母親から感染することが多いようです。

ある研究では、母親のむし歯菌の遺伝子と、子どものむし歯菌の遺伝子が共通している、という報告があります(*1)。

 

2)なぜ3歳まではむし歯菌がうつりやすいのか?

子どもの歯(乳歯)がはえてから3歳まではむし歯菌がうつりやすいと言われています。

なぜでしょうか?

歯がはえることで口の中の環境が変わりやすいからです。

とくに、子どもが1歳半~2歳半頃は「感染の窓」とよばれ、むし歯菌に感染しやすい時期(正確には19~31カ月)です。

また歯がはえてから3年間は、歯が弱いので、乳歯は2~5歳、永久歯は7~15歳が特にむし歯になりやすいということを覚えておいてください。

3)口の中の細菌は口腔細菌フローラをつくっている

口の中には500種類以上の細菌がいると言われています(*2)。

腸内の細菌フローラと同じく、口の中でも口腔(こうくう)細菌フローラをつくっています。

時間が経つと、口腔細菌フローラの中で、ある特定の菌が増えていきます。

砂糖が多ければ、むし歯菌が増えるでしょう。

代表的なむし歯菌の名前は、ミュータンス菌です。

 

 

4) 3歳までにむし歯菌に感染しなければ、一生むし歯にならないの?

3歳までにむし歯菌に感染しなくても、大人になってからむし歯になる可能性はあります。

大人の歯(永久歯)がはえる6₋7歳頃に友人間でむし歯菌がうつる可能性があります(*3)。

子どもの歯(乳歯)から大人の歯(永久歯)にはえかわる6~12歳頃は口腔細菌フローラに大きな変化が起こるので、「第二の感染の窓」と呼ばれ、再びむし歯菌に感染する可能性が上がる時期です。

 

5) 歯を失う原因はむし歯だけじゃない!?

子どもと関わる方は、口の中の細菌叢(口腔細菌フローラ)を整えましょう。

歯を失う2大原因はむし歯(う蝕)と歯周病です。

むし歯になったことがないから、と歯磨きをおろそかにすると、歯周病菌が増えてしまうかもしれません。

歯周病菌を増やさないためには、毎食後の歯と歯肉の間を優しくマッサージするように磨き、プラーク(歯垢)をとりのぞくことです。

食生活やオーラルケアが疎かになれば、むし歯にはなる可能性があります。

なぜならば、アメなどの砂糖が多いお菓子や頻回の間食で、その環境に適したむし歯菌がふえてしまうからです。

口の中の環境を整えるのは、ブラッシングです。

小学生のうちはきちんとみがけないので、両親の仕上げ磨きも大事になりますね。

まとめ

19~31カ月がうつりやすい、と言われていますが、子どもにキスや口移しを絶対にしてはいけないわけではありません。
むし歯菌を感染させないためには、子どもが生まれる前から口腔細菌フローラの中でむし歯菌を増やさない環境にすることが重要です(*4)。

毎食後のブラッシングをいつもより少しだけ丁寧にしてみてください。
キスや口移しをしないようにするのではなく、うまれる前にむし歯の治療を終えて、日々のオーラルケアや定期的なメンテナンスで口腔内フローラの中でむし歯菌を減らすようにしてくださいね。

 

参考文献

*1 「Early childhood caries update: A review of causes,diagnoses,and treatments」(Hakan Colak, Coruh T. Dulgergil et al, J Nat Sci Biol Med. 2013; 4: 29-38.)

*2 『口腔微生物学・免疫学 第4版』(医歯薬出版 / 【編集】川端重忠、小松澤均、大原直也、寺尾豊、浜田茂幸)

*3「Horizontal transmission of streptococcus mutans in schoolchildren」(Pilar Baca, Ana M. Castillo, Maria J. Liébana, et al, Med Oral Patol Oral Cir Bucal. 2012; 17: e495–e500.)

*4 「Mother-to-child transmission of Streptococcus mutans: a systematic review and meta-analysis」(da Silva Bastos Vde, Freitas-Fernandes , Fidalgo TK, et al, J Dent. 2015; 43: 181-91.)

 

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

 

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口腔外科医(歯科医師)。医学博士。北海道大学卒業後、 日本一短命の青森県に戻り、地域医療に従事。バルセロナ、メルボルン、香港など国内外の学会で研究成果を発表。「口」と体を健康に保つ方法を体系化、情報を発信している。趣味は読書(Amazon「ベスト100レビュアー」)とハンドボール。
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