2018/02/15

歯周病は治るの?歯のクリーニング(プラーク・歯石除去)と歯茎(歯肉)の健康

 

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口腔外科医(歯科医師)。医学博士。 全米No.1のガンセンター、MDアンダーソンガンセンターでゲノム研究に挑戦しています(Python, R, バイオインフォマティクス、機械学習)。「口」と体を健康に保つ方法を体系化、情報を発信中。
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口の臭いやネバネバ感が気になっている方はいませんか。

「歯周病」の検査をしてみると、前回より歯周ポケットが深くなっている方がいました。
「歯周病」の進行を防ぐために歯ブラシをがんばってきたのに、と残念そうでした。

定期的に歯科医院で歯石除去していれば、歯周病は治るのでしょうか。
それとも治らずに口臭や口のネバネバ感などの症状が改善するだけのでしょうか。

今回は「歯周病は治りますか?」という質問に答えながら、歯クリーニングと、歯茎(歯肉)と糖尿病などの全身の健康との関連についてお話します。

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そもそも「歯周病」とはどんな病気なのでしょうか。
早速、始めましょう。

1) 「歯周病」は「歯肉炎・歯周炎・咬合性外傷」の3つにわけるのがポイント
2) 初期プラークでとどめ、口腔細菌フローラを整えよう!
3) ご注意。歯周病に似た3つの歯の病気
4) 新常識。糖尿病と「歯周病」の意外な関係
5) 「歯周病」治療はプラークコントロールがすべての基本。

1) 「歯周病」は「歯肉炎・歯周炎・咬合性外傷」の3つにわけるのがポイント!

「歯周病」は大きく3つにわけられます。

①歯肉炎(しにくえん)
②歯周炎(ししゅうえん)
③咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)

 

歯肉炎→歯周炎→咬合性外傷と悪化していきます。
ただ咬合性外傷は歯周炎がなくても「かみ合わせ」が原因で起こることがあります。
順番に説明していきましょう。

 

まず、歯肉炎(しにくえん)です。
歯茎(歯肉)が赤く腫れて、歯肉ポケット(仮性ポケット)ができた状態です。
歯肉ポケットは歯茎(歯肉)が腫れてできた溝なので、きちんと原因が除去できれば、歯肉炎は治ります。

腫れた歯茎(歯肉)に歯ブラシが当たると血が出てしまうことがありますが、
ここでブラッシングがおろそかになると、歯肉炎が歯周炎に進みます。

 

次に、歯周炎(ししゅうえん)です。
歯を支える骨(歯槽骨/しそうこつ)が壊され、歯周ポケット(真性ポケット)ができた状態です。
支える骨が壊されるので歯が揺れたり、膿や口臭も出てきます。

歯周病の治療の後に歯茎(歯肉)がやせてしまった、という方は、歯周炎で骨が壊されていたからです。
歯周炎は歯茎(歯肉)だけでなく、骨が壊される病気でもあるのです。

そして、咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)は、歯を支える骨(歯槽骨/しそうこつ)や歯周靭帯・歯根膜(しこんまく)が噛む力を支えきれない状態です。
かみ合わせが原因で起こる場合と、歯周炎が原因で起こる場合があります。
歯ぎしり(ブラキシズム)が「歯周病」を悪化させる力になることもあるのです。

 

2) 初期プラークでとどめ、口腔細菌フローラを整えよう!

プラーク(歯垢)は、歯磨きで完全にきれいにしても数時間後にはつくられてしまいます。

「歯周病」の主な原因は、プラーク(歯垢)の口腔細菌フローラ(口腔細菌叢/こうくうさいきんそう)です。

初期プラークの中で、細菌はどんどん増えて口腔細菌フローラ(口腔細菌叢/こうくうさいきんそう)は成熟して、病原性を強めます。
成熟プラークが石灰化(せっかいか)したのが、歯石(しせき)です。

つまり、歯石は細菌の塊。

しかも残念なことに歯石になってしまうと、歯ブラシではもう除去できません。

逆に言えば、口腔清掃はプラーク(歯垢)を初期でとどめておくことが、口腔細菌フローラの病原性を弱めることにつながるのです。

 

3) ご注意。「歯周病」に似た3つの歯の病気

歯周病と似たような症状の歯の病気がいくつかありますので、今回は3つご紹介します。

① 歯根破折(しこんはせつ)、
② 根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)、
③根面う蝕が(こんめんうしょく)

 

まず、歯根破折(しこんはせつ)は、根が割れてしまった状態です。

マキが割れるように根にヒビが入って割れてしまい、被せ物が取れたり、歯が揺れたり、歯茎(歯肉)が腫れることもあります。

 

次に、根尖性歯周炎は、歯の中を通って骨の中まで細菌が入った状態です。

むし歯が進行して最近が骨まで達しているので、悪化すると、のう胞ができたり、骨の周りに炎症がおよんだりします。

 

そして、根面う蝕は歯茎の下(縁下歯肉)にむし歯ができてしまった状態です。
歯茎の下(縁下歯肉)にむし歯があるので、歯茎(歯肉)が痛むことがあります。

4) 新常識。糖尿病と「歯周病」の意外な関係

「歯周病」は糖尿病の合併症ではあり、糖尿病のコントロールがついていないと、「歯周病」は悪化します。

糖尿病情報センターは、「歯周病と糖尿病は密接に関連していると言われており、歯周病の治療をすると血糖コントロールが改善するという研究成果も数多く報告されています。」としています。

 

しかし、「歯周病」の治療をしても、血糖値が下がるわけないことが、システマティックレビュー(複数の研究を総合的に評価する研究)で明らかになっています(*5、6)。

 

ただ一つ言えるのは、プラーク(歯垢)は、砂糖があれば、ネバネバにより強固になります(不溶性グルカン)。
生活習慣として、砂糖を制限するという意味では糖尿病にも「歯周病」にも意味がありそうです。

 

また、「歯周病」は歯を失う2大原因の一つです。
糖尿病は食事による治療が基本なので、ゆっくり食べたりよく噛むためには、「歯周病」を悪化させないことが大事になりますね。

 

5) 「歯周病」治療はプラークコントロールがすべての基本。

「歯周病」の主な原因は、プラーク(歯垢)の口腔細菌フローラ(口腔細菌叢/こうくうさいきんそう)です。

口腔清掃はプラーク(歯垢)を初期でとどめておくことが、口腔細菌フローラの病原性を弱めることにつながります。

 

口呼吸や歯並びの乱れがあると、プラークがつきやすくなりますし、頬のスペースがないと、歯ブラシが入りにくくなります。

 

歯ブラシや補助清掃用具(フロス、歯間ブラシ)によるプラークコントロールができていないのにいくら歯科医院で歯石をとっても意味がありません。

 

「歯周病」は一度治ったらそれで終わりではありません。
生活習慣が乱れたり、プラークコントロールがおろそかになれば、また「歯周病」は再発します。

 

病状が安定したら、定期的にかかりつけ歯科医院に通い、健康な歯茎(歯肉)と生活習慣を続けたいですね。

 

 

参考文献:

*1日本臨床歯周病学会 歯周病とは

*2日本歯周病学会 歯周病Q&A

*3日本歯科医師会 歯周病

*4糖尿病情報センター 歯周病と糖尿病の深い関係

*5豊島 義博 (編集),‎ 南郷 里奈 (編集),‎ 蓮池 聡 (編集) 学びなおしEBM GRADEアプローチ時代の臨床論文の読み方 クインテッセンス出版

*6 Engebretson S, Kocher T. Evidence that periodontal treatment improves diabetes outcomes: a systematic review and meta-analysis. J Clin Periodontol, 40; 153-63, 2013.

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

 

 

 

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